透析の準備が必要となった患者様へ
透析の準備が必要になったら…知っておきたい「シャント」のこと
(主治医の先生からシャントの手術を勧められたらお読みください)
血液透析を行うためには患者さんの体から大量の血液(1分間に200ml前後)を約4時間持続的に採取して透析機械の中に通し、毒素と水分などを除去した後に再び患者さんの体へ戻す必要があります。
しかし、通常採血や点滴などで針を刺す健常な血管ではそのような大量の血液を採取することは出来ません。
このために必要なのが「シャント」と呼ばれる手術を受けて準備をする事です。
透析に必要な大量の血液を採取できるように新たに患者さんの体に手術によって作成された仕組みを一般にバスキュラーアクセスといい、代表的なものが現在その大半を占める「シャント」(内シャント)になります。
内シャントとはそのままでは大量の血液を採取することのできない血管(静脈)を、筋肉の奥深くにあって心臓から直接全身に血液を送る動脈(脈をとる血管)と手術で直接つなぐことにより、たくさんの血液が流れるようになる仕組みの事です。
通常は患者さんの前腕の皮膚を数センチ切ってその下にある動脈と静脈で行い、1時間程度の手術になります(自家血管内シャント)。
しかし患者さんの血管が細かったり、固くなって詰まっていたりすると、人工血管を用いる必要がある場合があります(人工血管内シャント)。
いくつか問題はありますが、透析治療を長く行っていくうえで現在のところ内シャントに勝る方法はありません。
しかし、バスキュラーアクセスには内シャント以外の方法もあり、現在は非主流ですがそれぞれに一長一短があります。
患者さんの状態によってはそれらの方法も考慮することが必要になります。
透析患者さんの内シャント(自分の血管で作成した場合):手首付近で動脈と静脈をつなぐことにより、術後2週間もすると図にみられるように発育して太くなったシャント静脈となる。この発育した血管に脱血と返血のため2本針を穿刺することにより血液透析を行う。
内シャントの根本的問題点
内シャントには根本的に解決することができない問題(合併症)が存在します。仮に神様が手術をしたとしても完全には避けることが出来ません。
通常の前腕で内シャントを作成した場合、手術前に前腕に送っていた血液に加えてシャントとしてつないだ静脈に新たに流れ込む分だけ、心臓は余分の血液を送る必要が出てきます。
わずかではありますが、心臓に負担をかけることになります。
一方で人の体には自分で悪い部分を治そうとする力があります。病気を治す大きな力です。
この力が、多少とは言え心臓に負担をかける体に悪いシャントに対しては、シャントの静脈に流れ込む余分な血液を止める方向に働くことになります。
透析を行うためにせっかく手術をして多くの血液が流れるようになったシャントの静脈ですが、だんだん血管の壁が厚くなって内部が狭くなったり、部分的に血の塊ができたりして血液が流れなくなって詰まってしまう(閉塞)ことはある程度当然に起こってくるわけです。
このためシャントは手術後も閉塞させないための定期的なメンテナンスや閉塞した場合の治療が大切になってきます。
定期的なメンテナンス
定期的メンテナンスの一つ、シャント血管拡張(PTA)を施行中の様子:シャント血管にカテーテルが挿入された状態。接続されたバルーン加圧器を操作することにより、狭くなった血管部分を拡張する。